非常に深い味わいを持つ歴史群像劇
2021年に制作された時代劇『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』は、全20話で構成されている。物語の骨格を築いたのはキム・ジスとパク・チョルの2人の脚本家だ。メガホンを取ったのはクォン・ソクチャン監督である。画面を彩る主要キャストには、チョン・イル、クォン・ユリ(少女時代)、シン・ヒョンス、キム・テウらが名を連ねた。韓国時代劇をよく見ている私(康熙奉)にとっても、この俳優陣は魅力的だった。
数いる役者陣の中でも、ひときわ強い光を放ったのがクォン・ユリで、ヒロインのファイン翁主(オンジュ)に扮した。劇中、彼女は数奇な運命に巻き込まれる。チョン・イル演じるバウの勘違いにより、「ポッサム」の標的となってしまうのだ。これは未亡人を布で包み込んで連れ去るという風習である。そんな非日常的な事態の中でも、彼女は王女としての気高い振る舞いを完璧に表現していた。
チョン・イルとクォン・ユリが物語を牽引する本作は、歴史群像劇としても非常に深い味わいを持つ。舞台は光海君(クァンヘグン)が治める激動の時代である。王権と有力家臣との間で繰り広げられる熾烈な権力闘争が、実にスリリングに描写されている。(ここから先は、ドラマのあらすじに関する記載を含みますのでご注意ください)
とりわけ、時の王である光海君を演じたキム・テウと、権力者のイ・イチョムを演じたイ・ジェヨンの対立構造は圧巻だ。2人ともに時代劇の経験が豊富なベテラン俳優である。火花を散らすような彼らの政治的駆け引きは、作品に強烈な緊張感を与えていた。
視聴者の心を震わせた至高のハイライト
物語全体を通して、特に私の脳裏に焼き付く名場面がある。それはやはり、ファイン翁主が誤って拉致されるくだりだ。
本来、バウが行う裏稼業は善意に基づいていた。当時の社会情勢により再婚が許されない未亡人を、密かに思い人の元へ送り届けるという役割である。しかし、彼は致命的なミスを犯す。別の女性を狙うはずが、誤って王女をさらい出してしまうのだ。この手違いが、国家を揺るがす大事件へと発展していく。
自らの不運な境遇に絶望したファイン翁主は、とうとう川へと身を投じてしまう。しかし、間一髪のところでバウが彼女の命を救い上げた。これを契機として、彼女の心に少しずつ生きる気力が芽生え始める。この劇的な展開は、クォン・ユリの際立つ美貌と、チョン・イルの頼もしい力強さが鮮やかに交差する。間違いなく、本作において最も視聴者の心を震わせた至高のハイライトだった。
チョン・イルが積み重ねてきた実績と経験
最後に、私がぜひ触れておきたいのは、チョン・イルと時代劇の相性の良さについてである。
彼はこれまでにも、時代劇の名作に数多く出演してきた。例えば、大ヒット作『太陽を抱く月』においては、深い哀しみを抱えた王族を抒情的に演じている。彼の見せる潤んだ瞳は本当に印象的。時代劇という舞台で、心の奥底にある悲哀を見事に表現していた。
また、『ヘチ 王座への道』においては、朝鮮王朝の偉大な名君である英祖(ヨンジョ)に扮した。この英祖は、王族でありながら母親の出自が低いという理由で周囲から幾度も軽んじられてきた人物である。そうした過酷な境遇の中でも力強くたくましく生き抜いていく若き日の姿を、チョン・イルが実に凛々しく演じていた。さらに物語の後半、国王に即位してからの威風堂々たる姿勢も大いに評価された。
このように、時代劇において確かな実績と経験を積み重ねてきたチョン・イルが、今回の『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』においても本領を遺憾なく発揮し、韓国時代劇の重厚な伝統をしっかりと守り抜いていた。
文=康 熙奉(カン ヒボン/作家および韓流ジャーナリスト)
写真=ハン・スンウン(フリーランス・カメラマン)



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