波の音とは異なる激しい轟音
韓国の最南端の海上に浮かんでいる済州島(チェジュド)。国際リゾート地として有名で、韓国随一の観光地でもある。この島の南部に位置しているのが西帰浦(ソギポ)市である。風光明媚な景観が多いことでよく知られている。
私(康熙奉)がこの西帰浦市に行ったときは、まず中心部にある中央市場を散策した。とにかく鮮魚店が多い。その店先に獲れたばかりの魚が山のように積まれている。それを見ながら目を肥やしたあと、市場を抜けて東南の方向に歩いて行くと、15分ほどで正房瀑布の入り口に到着した。場所は切り立った崖の上である。そこから海面へ向かって長い階段が伸びている。1歩ずつ下っていくと、寄せては返す波の音とは異なる激しい轟音が耳に届いた。
その音の正体は、川の水が絶壁から真っ直ぐ海へと注ぎ込む音であった。済州島に数ある滝の中でも、際立って知名度が高い正房(チョンバン)瀑布である。
滝が生み出す涼やかな風を堪能
水しぶきが足元を濡らす距離まで接近してみた。ひんやりとした空気に包まれる。瞬時に体温を奪うような鋭い冷たさである。
正房瀑布は落差23メートル、幅は10メートル強である。全体のサイズはそこまで巨大ではない。しかし、海へダイレクトに注ぎ込む点が最大の特徴である。このような形態の滝は、世界的にも稀有な存在であろう。
改めて下から仰ぎ見ると、大量の水が猛烈な勢いで迫ってくる。重力の圧倒的な力をまざまざと見せつけるような光景である。まさに、瀑布が生み出す冷気が生きる喜びを甦らせてくれたのである。
西帰浦には、もう1つ広く知られる滝が存在する。それが天地淵(チョンジヨン)瀑布である。西帰浦の港を弧の形に囲む断崖の奥深くに位置している。奇岩の連なる壁から幅広く水が流れ落ちる様子は、滝特有の激しさがなく非常に優美である。「天女がこっそり舞い降りて水浴びを楽しんだ」という言い伝えがあるのにも納得できる。また、海風にさらされる正房瀑布とは環境が異なる。天地淵瀑布の周りは深い木々に覆われており、私も本当に心穏やかな気分になれた。
何より素晴らしいのは、遊歩道がきれいに整えられている点である。天地淵瀑布を真っ直ぐに見渡せる休憩スポットに立ち止まった。そして、滝が生み出す涼やかな風をしばらく堪能した。
済州島はまさに海鮮の楽園
その後、有名な刺身専門店へと足を運んだ。そこで味わった新鮮な魚介類は申し分のない美味しさであった。口にした順番に種類を挙げてみよう。
アワビ、カキ、サザエ、ウニ、ヒラメ、タイ、ナマコ。それに加えて、名称のわからない魚や貝類も含まれていた。まさに至福の味わいである。
テーブルの上は乗り切らないほどの海鮮皿で埋め尽くされた。次々と運ばれてくる料理を置くスペースを確保するため、新鮮な魚介類をひたすら口へ運び続けた。ヒラメは1匹まるごと姿造りで提供され、アワビに至っては追加のサービスまであった。
驚くべきことに、このボリュームと品数の多さは決して特別なコースというわけではなかった。西帰浦の地元では、ごく一般的な食事のスタイルだという。済州島はまさに海鮮の楽園である。そんな感嘆の言葉が、思わず私の口からこぼれ落ちた。
文・写真=康 熙奉(カン ヒボン/作家および韓流ジャーナリスト)


