大阪のJR環状線に乗って鶴橋駅で降りると、電車のドアが開いた瞬間に、独特のにおいに刺激される。そのにおいの元は、焼肉だったり、発酵したキムチだったりする。
とにかく、食欲を刺激される。必然的に期待が高まってくる。
駅を降りてから、ブラリと歩いてみる。
迷路のように市場が縦横に続いている。ようやく人とすれ違えるという細い路地の両側には小売りの店がビッシリ。それを見ながらキョロキョロと前に進む。
「この先に何があるのか、わからない」
そう思わせてくれるワクワク感が市場に満ちている。
市場を歩いていて目立つのが、キムチをズラリと並べた食堂や、華やかなチョゴリで飾った服装店である。
その光景を見ていると、つい新大久保と比べてしまう。成り立ちがまったく違うというのに……。たとえば、東京の新大久保は、過去30年の間に韓国から来た人たち(いわゆるニューカマー)によってコリアンタウンが形成された。
韓流がブームになるにつれて新大久保が賑わったのも、そこには「韓国の今」があふれていたからだ。
しかし、鶴橋は違う。
戦前から大阪に住み着いた「在日」の人たち(済州島〔チェジュド〕の出身者が多い)とその子孫が、鶴橋周辺の市場や商店街を活性化させてきたのである。
実際、鶴橋に来ると、五感を大いに刺激される。
「目で市場の壮観な光景を楽しみ、鼻で食欲を刺激するにおいを嗅ぎ、耳で賑やかな売り子さんの口上を楽しみ、舌で滋味豊かな食材を味わい、最後にまとめて気分を高揚させていく」
それが鶴橋であり、ちょっと気がめいっているときに来ると「小さなことでクヨクヨするな」と励まされるのだ。この自発的な気分転換がありがたい。
活気がある食堂に入って、冷麺とチヂミを注文する。キムチは食べ放題になっている。このように、キムチを何度でもお替わりできるというシステムを最大限に利用する。これは、本当に助かる。
文・写真=「エンタメオアシス」編集部



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